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財産分与の大原則
夫婦が離婚するとき、相手方の請求により一方が相手方に財産を渡すことを財産分与といいます。財産分与は、「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」とされています(民法768条3項)。
財産分与には、①清算的財産分与(婚姻中に夫婦で協力して形成した財産を共有財産とし、それぞれの貢献度に応じて公平に分配する)、②扶養的財産分与(離婚後に夫婦の一方が生活に困窮する可能性がある場合に、生活を補助するための財産分与)、③慰謝料的財産分与(離婚原因などで夫婦の一方から他方へ慰謝料を支払う場合、その慰謝料を含めた財産分与)があります。
このうち、①清算的財産分与の目的は、婚姻から離婚までに夫婦が協力して築き上げてきた財産を公平に分配することにあり、夫婦それぞれの財産形成に対する貢献度によって決まるという考え方がとられています。もっとも、それぞれの家庭の状況に応じて、財産形成に対してどちらがどれだけ貢献したのかを判断することは非常に難しいため、原則として、収入額だけではなく家事労働も評価の対象とし、「原則2分の1」とされています。
家庭裁判所は、財産分与割合の「2分の1ルール」を大原則とし、よほどのことがない限り、この原則を採用しています。
財産分与の割合が「2分の1」以外になる場合
夫婦の協力扶助義務の分担状況に大きな不均衡がある場合
夫婦には、同居し、互いに協力し扶助しなければならない義務があります(民法752条)。この義務の分担において、夫婦間に大きな隔たりがあった場合、財産分与の割合を「2分の1」とすることはむしろ当事者にとって不公平と考えられる場合があります。
裁判例としては、芸術家夫婦の財産分与について、妻が約18年間もっぱら家事労働に従事していたこと、双方の収入や生活費の負担割合を総合考慮し、夫婦共有財産の形成に対する貢献度を妻6:夫4としたものがあります(東京家庭裁判所平成6年5月31日審判)。
夫婦の一方の特殊な能力や資格により形成された財産が含まれている場合
夫婦の一方が高収入であるだけで「2分の1ルール」が修正されるわけではありません。しかし、その高収入がその人の特殊な技能や能力などによるものであったり(スポーツ選手など)、その高収入を得るための資格や特殊な技能が、婚姻前の本人の個人的な努力により形成され、かつ、その収入により極めて高額の資産が形成されている場合、例外が認められています。もっとも、この場合も、婚姻後における高収入の維持・増加については、配偶者の貢献が認められます。
裁判例として、医師であり医療法人経営者である夫が、婚姻前から勉学等の努力をし、婚姻後に医師の資格により多くの時間と労力を使って高額の収入を得ていた事案で、夫婦共有財産の形成に対する貢献度を夫6:妻4としたものがあります(大阪高等裁判所平成26年3月13日判決)。
また、1級航海士の資格を持つ夫が、1年の多くを海上勤務するなどして多額の収入を得ていた一方で、妻は家事育児を担っていた事案で、夫婦共有財産の形成に対する貢献度を夫7:妻3としました(大阪高等裁判所平成12年3月8日判決)。
夫婦が別居して生活している期間に相互に経済的な協力関係等がない場合
単に単身赴任で別の場所で生活していたということとは異なり、その別居生活が夫婦としての共同生活を否定する状況と評価される場合は、稀に、「2分の1ルール」の修正が行われる場合があります。
夫婦の一方が著しい浪費により共有財産を減少させた場合
金銭の消費は共有財産を減少させる行為であり、合理的な理由もなく、夫婦の年収に比して明らかに過大な支出と評価されると、その支出は浪費と評価され、浪費をしていた配偶者に不利な「2分の1ルール」の修正が行われる場合があります。
夫婦財産契約により財産分与の割合を合意していた場合
夫婦財産契約は、婚姻前に当事者間で財産等に関するルールを取り決める契約です。この夫婦財産契約は、婚姻前にしか締結できず(民法755条)、この契約で財産分与の割合を取り決めていた場合は、離婚時の財産分与はその割合に従って行われることになります。もちろん、離婚時に、夫婦がその取り決めとは異なる割合で分与することに合意すれば、その合意が優先されます。
財産分与の割合は「2分の1」が原則ですので、それが公平ではないとして修正を求める場合は、その主張をする側が、上記のような特別な事情を主張・立証する必要があります。「2分の1ルール」の修正はごく限られた場合にのみ認められること、また、離婚条件の交渉は、財産分与以外の条件も含めた様々な問題点を考慮する必要があることから、財産分与の割合を争うのか否かは、総合的に判断することが大切です。
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