親権とは
親権は、親が未成年者の子を健全な一人前の社会人として育成すべく養育保護する権利義務であり、その内容は、大別して子の監護及び教育に関する親の権利義務(身上監護権)と子の財産管理や法定代理に関する権利義務(財産管理権)とされています。
諸外国の親権行使の態様
児童の権利に関する条約が1989年に国連総会で採択されて以降、離婚後も父母双方と関わりを持ち続けることを子の権利として尊重する風潮が世界的に広まりました。
その結果、国によって具体的な内容は異なるものの、インド及びトルコでは離婚後は単独親権のみが認められていますが、その他の多くの国では単独親権に加え、共同親権も認められています。
共同親権を認める国の中でも次のような違いがあります。
- 裁判所の判断等がない限り原則として共同親権とする国
イタリア、ドイツ、オーストラリア、フィリピン、フランス等 - 父母の協議により単独親権とすることもできる国
カナダ(ブリティッシュコロンビア州)、スペイン
- 養育している親が子に関する事項を決定し、共同で行使することはまれである国
インドネシア
- 父母のいずれもが親権を単独で行使できる国
イギリス、南アフリカ
父母が共同して行使する親権の内容
親権を共同で行使する事項の具体的内容が明らかになったものとして、次のようなものがあります。
- 内容に限定のない国
スイス、フィリピン、米ワシントンDC
- 子にとって著しく重要な事柄等と抽象的に定める国
ドイツ
なお、子にとって著しく重要な事柄としては、居所指定、教育に関する根本的な問題、施設や学校の選択、選択した学校教育の中断又は変更、職業教育の終了、重大な合併症や副作用の危険がある医療的措置の決定等があげられます。
- 共同行使する内容を具体的に定める国
イタリア(教育、健康、子の居所の選択)、メキシコ(財産管理権)
共同親権の行使について父母の意見が対立する場合の対応
離婚後の共同親権の行使について、父母が対立した場合の解決策が明らかになったものは、次のとおりです。
- 最終的には裁判所が判断する国
イギリス、ドイツ、ブラジル、米ワシントンDC等多くの国 - ①に加えて、当事者が予め紛争解決方法を決めておくこともできるとされている国
韓国 - ①に加えて、行政機関が助言、警告等をする国
タイ - 裁判所の判断にあたり、外部の専門家や関係機関の関与が認められる国
イタリア、スウェーデン、オーストラリア等
例えば、オーストラリアでは、裁判所では専門性を有するソーシャルワーカーや心理学者を家族コンサルタントとして指名することができ、コンサルタントから裁判所へ報告書が提出される。
日本で共同親権が施行された場合の課題
共同親権が施行されても、父母が別居している以上、子の主たる監護者を父母いずれか一方に定めることになるため、監護者が単独で決められる事項と共同でなければ決められない事項の決定が問題になります。そして、共同で決定する場合にはその関与方法も問題になります(事前の合意、単独で決定後に他方の親が異議申し立てにより関与する)。
法務省の調査によれば、諸外国では、面会交流や養育費の取り立ての支援体制等を整えた上で離婚後の共同養育を推進してきたとの指摘もあるようであり、日本でも、子の利益をかえって害することにならないよう、父母が適切な形で子の養育に関わることができるようにするためにどうすべきかについて、議論を深めることが期待されます。
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