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持ち家も財産分与の対象になる
マンションでも一戸建てでも、持ち家が夫婦共有財産である限り、離婚の際には財産分与の対象になります。
夫婦共有財産とは、婚姻中に夫婦で協力して形成した財産をいいます。夫婦で協力して形成した財産と評価できれば、登記名義が夫婦共有の場合はもちろん、夫婦一方の単独名義であったとしても、財産分与の対象になります。
ここで、婚姻中のどの時点の財産が財産分与の対象になるかを確認しておきましょう。財産分与の対象になるのは、夫婦の協力関係の下で形成された財産です。そのため、原則として婚姻後、夫婦の協力関係が終了するまで、すなわち別居時までに形成され、存在していた財産が財産分与の対象になります。この別居時を財産分与の「基準時」といいます。
なお、婚姻前から夫婦が各自で保有していた財産や、婚姻後であっても、第三者からの贈与や相続等により取得した財産は、夫婦間の協力とは無関係に形成された財産ですので、財産分与の対象にはなりません。これを夫婦共有財産に対して、「特有財産」といいます。
持ち家の財産分与の際に確認すべきこと
前述のとおり、別居時点までに形成され、存在していた財産が財産分与の対象になります。そのため、財産分与を円滑に行うためには、夫婦間で別居時、すなわち財産分与の基準時はいつかという点について、共通の認識を持つことが不可欠です。
持ち家について適切に財産分与を行うためには、住宅ローンを無視することはできません。そこで、まずは住宅ローンの残債務額と債務者を確認します。
残債務額は、最新の住宅ローンの返済明細表や、借入先の金融機関に残高証明書を発行してもらうことで確認することができます。前述のとおり、財産分与の基準時は別居時なので、別居時の正確な残債務額も確認しましょう。債務者については、上記返済明細表や残高証明書にも記載されますが、不動産の登記事項証明書に記載されている抵当権設定者から、住宅ローンの債務者を把握することも可能です。
持ち家の価値を評価する方法は、固定資産税の評価額や路線価等、さまざまなものがありますが、財産分与の際には、時価、すなわち市場価格を用います。時価を知るためには、不動産会社に査定を依頼するという方法が一般的です。また、当事者において複数の査定を取得し、合意の上でその平均値を持ち家の価値とする、といったことも行われています。不動産鑑定士に鑑定を依頼するという方法もありますが、通常、鑑定費用はかなり高額になります。
なお、持ち家が財産分与の対象となるためには、基準時(別居時)に存在していることが必要ですが、その価値の評価は、基準時の時価ではなく、実際に財産分与を行う離婚時、または離婚に近接した時点での時価で行います。
持ち家の財産分与の方法
売却し、現金化して分ける方法
住宅ローンがない場合
買主を見つけて売却し、夫婦それぞれが売却代金の2分の1ずつを取得します。売却代金から売却諸費用(不動産仲介手数料等)を支払う場合は、支払後の残額を2分の1ずつ折半することになります。
住宅ローンがある場合
アンダーローンの場合
アンダーローンとは、住宅ローンの残債務額が不動産の売却価格を下回る場合をいい、売却後に余剰(売却益)が発生することになります。この場合は、売却代金から、住宅ローンの残債務額全額と売却諸費用を支払って清算し、残額を2分の1ずつ折半することになります。
オーバーローンの場合
オーバーローンとは、住宅ローンの残債務額が不動産の売却価格を上回る場合をいい、売却後も住宅ローンが残ることになります。この場合、その不動産はマイナスの資産となり、財産として分ける価値がないものと評価されるため、財産分与の対象にはなりません。そして、売却しても完済できなかった住宅ローンの残債務は、離婚後も住宅ローンの名義人が返済していくことになります。ただ、住宅ローンが残っているということは、抵当権もそのまま残っているのが通常であり、抵当権付きのままではなかなか買い手が見つからないというのが実情です。
夫婦のどちらかが持ち家全部の所有権を取得し、他方に金銭(代償金)を渡して精算する方法
住宅ローンがない場合
前述の不動産会社の査定等をもとに持ち家の時価を確定させ、所有権を取得する一方当事者が、他方当事者に時価の2分の1にあたる金銭を代償金として支払います。
住宅ローンがある場合
アンダーローンの場合
持ち家の時価から、基準時における住宅ローンの残債務額を控除した残額が、財産分与の対象となる持ち家の正味の価値となります。そこで、所有権を取得する一方当事者が、他方当事者に当該残額の2分の1にあたる金銭を代償金として支払います。
オーバーローンの場合
前述の通り、オーバーローンの持ち家はマイナスの資産となり、そもそも財産分与の対象にはなりません。住宅ローンの残債務は、離婚後も住宅ローンの名義人が返済していくことになります。
3 夫婦の共有名義にすること
夫婦で公平に持ち家に関する権利を取得したいのであれば、それぞれの持分を2分の1ずつにして共有名義にするという方法もあります。この方法であれば、一方当事者が代償金を支払う必要もなく、財産分与を原因とする登記さえすれば手続は完了します。
しかし、離婚後も元夫婦で同一の不動産を共有すると、売却やリフォーム等に際し、その都度相手の承諾が必要になり、相互に自由な処分や管理ができなくなります。このような状況は、煩雑であるとともに、持ち家の処分や管理をめぐって新たな紛争が発生するというリスクもあります。
持ち家の価値に特有財産が含まれる場合
例えば、持ち家の購入時に頭金を独身時代の預貯金から支払った、親から贈与された金銭で住宅ローンの繰上げ返済を行ったというような場合、その頭金や繰上げ返済分が持ち家に占める価値相当額は、特有財産ということになります。したがって、その価値相当額は、財産分与の対象から外されることになります。
持ち家の価値に自身の特有財産が含まれるという主張はどのようにすれば良いのか、実際に特有財産として認められる金額はいくらになるか等については、かなり複雑な内容を含むため、弁護士などの専門家に相談すると良いでしょう。
まとめ
持ち家の財産分与の方法等についてご紹介しましたが、協議離婚の段階では、財産分与について夫婦で合意に至ればその内容が優先されるため、必ずこのようにしなければならない、という決まりはありません。したがって、協議の内容によっては、当事者の都合に合わせた、かなり柔軟な解決も可能です。協議で合意ができければ、家庭裁判所で調停を行い、調停委員の関与のもと、財産分与について交渉することになります。調停でも合意できなければ、最終的には離婚訴訟で裁判所が財産分与の方法を決定します。
各手続において、どのようにすれば自分の望む財産分与に近づけるか、専門家の意見も聞きながら進めていくと良いでしょう。
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